株式投資といえば、初心者のうちは日本株から始めて、慣れるに従って海外の株式を購入するという順序が暗黙裡に存在しています。日本人投資家にとっては、日本の企業という安心感がそのような行動を生んでいるのでしょう。
しかし、投資には順序も必然も存在しません。勝てる市場で勝負するのが一番賢い方法です。もし仮に、海外の市場を知らずに日本株投資を行っている場合は、深刻な機会損失を被っている可能性が高いでしょう。
この記事では日本株と米国株の違いを3つのポイントに分けて解説しています。世界の株マーケットではアメリカが強い優位性を示しているため、日本株に対象を絞ってしまうのは非常にもったいないと言えます。
海外投資といっても決して難しいわけではないので、より有利な投資環境を手に入れられるよう学んでいきましょう。
株式投資は日本株よりも米国株を選ぶべき理由
日本人は国内企業と馴染みが深いことから、まず最初に日本株投資に興味を抱きがちです。詳しい事情が分かりにくい海外企業よりも自国の株にターゲットを合わせるのは、いっけん合理的なように思えます。
しかし、株式投資においてまず初めに選ぶべきは日本株ではなく米国株でしょう。なぜなら、投資初心者にとって日本株は扱いにくく、米国株の方がよっぽどビギナー向けだからです。
普通に考えると、「株式」という金融商品である以上、日本株も米国株も同じようなものと捉えられます。これは間違いです。日本と米国の株式には明確な違いがあり、投資を始めるには最初にこのことを理解しておかなければなりません。
では、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。次の項目から詳しく解説していきましょう。
日本株と米国株で事情が異なるワケ
日本株と米国株の違いは3つのポイントに分けて考えることができます。まずは以下をご覧ください。
・市場規模
・ボラティリティ
・景気循環株とグロース株の割合
基本的に日本株は上記3つの観点から、米国株よりも不利な状態に陥っています。国内企業を対象とした投資が絶対的に悪いというわけではありませんが、より有利に戦える米国株を選択できるにも関わらず、日本株だけに対象を絞るのは損をしているといっても過言ではありません。
たとえば、企業経営でも同じですが、1個100万円で商品が売れる市場があるのに、50万円の市場にしか商品を提供していないとすれば、それだけで50万円分の機会損失が発生しています。製品1個単位でみれば損失は大きくはありませんが、販売数量が増えていくに従って機会損失の金額も大きくなります。
株式投資でもこうした機会損失を防ぐことが大切です。そこで、日本株と米国株の違いをしっかりと理解したうえで投資に臨みましょう。
市場規模
株式投資の市場規模は、取引所における株取引の活発さを表します。各取引所の時価総額を参考にすることで、国内や海外の市場規模を推し量ることができるでしょう。
日本の主要な株マーケットは東京証券取引所に集約されています。東京証券取引所の時価総額は約650兆円を記録しています(2018年10月21日時点)。
取引所の時価総額は、上場している企業の時価総額を合計したものです。各企業の株価を発行済株式数で掛け合わせて求めます。つまり、時価総額が高いほど、その取引所には高価格帯の株が集まっている、もしくは取引が盛況であることを示しているのです。
では、アメリカの取引所と比べてみましょう。
日本で東京証券取引所にあたる、アメリカで最も規模の大きい株マーケットはニューヨーク証券取引所です。ニューヨーク証券取引所の時価総額は約2,300兆円と、東京証券取引所の3.5倍の規模を誇ります。
また、ベンチャー企業向けに用意されたアメリカ株式市場ナスダックも、東京証券取引所の約2倍にあたる1,100兆円の時価総額を記録しています。
お分かりでしょうか? 1日に約3兆円もの売買が行われる東京証券取引所であっても、ベンチャー企業向けのナスダックにすら市場規模が及ばないのです。
市場規模の小さい取引所ほど株価のボラティリティに影響を与えます。ボラティリティについては次の項目でお伝えしましょう。
ボラティリティ
ボラティリティとは株価の変動率を表したものです。ボラティリティが高いほど期待収益率のブレが少なくなり、予測したものに近い収益値に近づきます。
先ほど日本株は米国株に比べて市場規模が低いとお伝えしました。そして市場規模が小さくなるほど、ボラティリティは低くなる傾向にあります。
株式を売買するのは個人投資家だけではなりません。日銀や政府による介入や、機関投資家による注文も市場規模の中には含まれています。公的機関や機関投資家は大量の買い付けを行うことが多いため、取引量や株価に対する影響力が強いのです。
つまり、市場規模が小さいほど、公的機関や機関投資家の影響を受けて価格変動が起こりやすいと言えるでしょう。日本市場がまさしくそうです。
仮に昨日1万円だった株価が、今日には5,000円まで下がっている。翌日には1万5,000円に急騰するなど、短期間の価格変動が大きければ大きいほど将来の株価を予想するのが難しくなります。
そのため、ボラティリティの低い市場を狙うということは投資の鉄則です。
景気循環株とグロース株の割合
日本株と米国株では、景気循環株とグロース株の割合が異なります。
景気循環株とは景気の動向によって業績に大きな影響を与える株式のことです。日本は化学や鉄鋼などの素材産業が発達しており、工作機械メーカーなど設備投資企業の力が強い特徴があります。こうした業界は好況・不況による株価の変動が激しい一方で、業績の回復も景気動向に依存しやすいと言えます。
一方、グロース株は成長力の高い有望な銘柄を指すことが多いです。景気動向による業績回復よりも、独自のイノベーションによる発展で企業価値を高めていきます。革新的な商品やサービスを生み出す力が強いことから、その将来性の高さが注目されています。
景気循環株とグロース株、どちらに投資すべきかはお分かりでしょう。
景気循環株は経済環境がよければ安定的に成長するようにも思えますが、独自の企業力が伴っていないため、時代の進歩とともに衰退していく可能性が高いです。景気動向に左右されず、企業力によってメキメキと成長していくグロース株は、たとえ経済危機が起きたとしても自力で立ち上がるパワーを秘めています。
日本はこのグロース株の比率が20%そこそこしかありません。ほとんどの銘柄が景気循環株に占められているのが現状です。アメリカは日本市場とは逆で、グロース株が約8割ものシェアを確保しています。
GAFAで学ぶ米国企業の強さ
アメリカのグロース株の強さはGAFAの株価に表れています。GAFAは、「Google」、「Apple」、「Facebook」、「Amazon」のアメリカ企業の頭文字を取った呼び方で、最近なにかと話題になっていますよね。書店では「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」という本も登場しました。
今ではGAFAの4社はアメリカを代表する大企業へと成長しましたが、未だにグロース株の位置づけを外していません。日本では大企業の株価推移は低調で安定的というイメージが強いですが、GAFAに限っては規模を拡大した後も成長に陰りが見えません。
たとえば、Googleは2004年にナスダックに株式公開を果たしましたが、当時の株価は85ドルに過ぎませんでした。そこから急激な勢いで成長し、上場からわずか3年で700ドルを突破、2018年には過去最高の1,200ドルを記録するほどです。
今では世の中に浸透するほどに知名度を高めたGoogleですが、2017年には昨年比30%の伸びを示すなど、グロース株とも呼べる成長率を見せています。
他にもAmazonも未だに年50%を超える成長を記録する「大企業グロース株」です。Amazonがナスダックに上場を果たしたのは1997年ですが、4年間の赤字が続き、2001年にようやく5ドルの株価を付けます。
低迷から始まったAmazonですが、その後の成長は凄まじく、2009年には100ドルを突破したかと思うと、2015年には年初来2倍の成長力で800ドルにまで株価を高めました。そこから2017年には1,000ドルの大台を軽く抜き、今年に入って2,000ドルを記録する大健闘を見せています。
実は日本株よりも米国株の方が投資初心者向き
GAFAで見たように、アメリカには大手企業であってもグロース株として成長する銘柄がたくさん存在します。他にも、MicrosoftやNVIDIA、Netflixなどの企業も大きな注目を集めています。
MicrosoftやGoogleは、IoTやクラウドサービスの市場で大きなシェアを誇っていることが特徴です。AppleやNetflixは革新的な商品やサービスによって、もはや世界から認められるブランドとして成長しました。
日本にはこうした企業が現れることが稀であり、力のある大手企業に至っては業績が株価に反映しにくいといった難点もあります。米国株と比べると、銘柄を選ぶ難しさにおいて投資初心者向けではないことが分かるでしょう。
今では外国株取引口座を利用して簡単に米国株投資ができるため、日本人だから日本株というイメージに捉われることは全くありません。アメリカの優位な市場環境を活かして戦っていきましょう。
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